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蓄電池材料の低コスト?高容量?寿命の共立に成功 ~鉄と酸素を有効に利用しリチウムイオン電池の資源リスク回避に期待~

カテゴリ:プレスリリース|2024年04月26日掲載


北海道大学
東北大学
名古屋工業大学

発表のポイント

〇 レアメタルフリーな鉄を主成分としたリチウムイオン電池正極材料を開発。
〇 鉄と酸素両方の反応を活用し高容量化。
〇 材料にシリコンやリンなどを導入し高エネルギー密度と高サイクル寿命の両立に成功。

概要

 北海道大学大学院理学研究院の小林弘明准教授、東北大学多元物質科学研究所の本間 格教授、名古屋工業大学大学院工学研究科の中山将伸教授らの研究グループは、低コスト?高容量?寿命の共立が可能なリチウムイオン電池の正極材料を開発しました。
 リチウムイオン電池は生活には欠かせないものとなっていますが、その正極材料にはコバルトやニッケルなどのレアメタルが使用されており、供給量の増大に伴う資源枯渇や価格高騰が深刻な課題となっています。サプライチェーンリスクが低い正極材料として、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用いたリチウムイオン電池が商品化されています。一方で、電気自動車などの大型電源用途としてさらなる高エネルギーを持つ新しいレアメタルフリー正極材料の開発が求められています。
 研究グループでは、レアメタルフリーな鉄を主成分としたリチウム鉄酸化物(Li5FeO4)の材料開発を進めています。この材料は鉄と酸素の二つのレドックス反応を利用することで、LiFePO42倍以上の容量を示します。しかし、この材料はサイクル寿命が悪いという課題があり、充電時に起こる酸素脱離反応を抑制する必要がありました。
 本研究では、Li5FeO4にシリコンやリンなどのpブロック元素を導入した正極材料で酸素脱離反応が抑制されることを発見しました。これら材料のサイクル特性を評価した結果、酸素のレドックス反応の容量維持率が50%から最大で90%に大きく向上することを見出しました。本材料設計指針は高性能なレアメタルフリー正極材料の材料設計指針として有効であると考えられ、研究進展による低炭素化社会、地球温暖化対策への貢献が期待されます。
 本研究成果は、2024422日(月)公開のACS Materials Letters誌に掲載されました。

press_nakyama_image.png

レアメタルフリーな鉄系正極材料の高容量高寿命化に成功

背景

 リチウムイオン電池は様々な携帯機器に用いられ、生活には欠かせないものとなっており、その高いエネルギー性能から電気自動車用の蓄電池など大型蓄電池としての需要が拡大しています。現行のリチウムイオン電池の正極材料にはコバルトやニッケルなどのレアメタルが使用されていますが、需要増大とともに資源枯渇や資源偏在性が深刻な問題となり、価格高騰などサプライチェーンリスクへの不安が増しています。これらの課題を回避しつつ技術革新を目指すためには、レアメタルフリーな金属資源を用いた正極材料の開発が重要です。安価な鉄を用いたリン酸鉄リチウム(LiFePO4)はサプライチェーンリスクの低い正極材料として注目されていますが、さらなる高エネルギーを有する新しいレアメタルフリー正極材料開発が求められています。
 研究グループでは、リチウム、鉄、酸素からなるレアメタルフリー正極材料の研究開発を進めており、近年、逆蛍石構造(図1)を持つリチウム鉄酸化物(Li5FeO4)がLiFePO42倍以上の可逆容量を示すことを報告しています(関連するプレスリリース)。この高容量の発現は、Li5FeO4をメカニカルアロイング*1によって準安定*2化させることで、これまでに利用できなかった鉄と酸素のレドックス反応の両方の利用が可能となったことを明らかにしています。
 しかしながら、Li5FeO4はサイクル特性が悪いという問題点があります。この材料は充電時に酸素の酸化反応が進行しますが、この酸化反応が過度に進行すると固体中の酸素が酸素分子まで酸化され、気体として放出されてしまいます。放出された酸素は元に戻らないため、サイクル特性を向上するためには、充電の際に競合して起こる酸素脱離反応の抑制が必須でした。 

研究手法?研究成果

 今回、酸素脱離反応を抑制するため、材料へ新しい元素を導入することを試みました。周期表の1318族の元素はpブロック元素と呼ばれ、特に13~16族の元素は酸素と強く共有結合をすることが知られており、Li5FeO4LiFeと容易に置換することが可能です。今回はLi5FeO4Feの一部をアルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、硫黄(S)の元素を置換した材料の合成に成功しました。
 これら合成した材料のサイクル特性を評価したところ、繰り返し10回目時点での酸素レドックス反応の容量維持率が50%から最大90%に大きく向上することを見出しました(図1)。特に、酸素レドックス挙動はシリコンを導入した材料が最も性能が高く、鉄のレドックス反応も合わせた正極全体のエネルギー密度ではリンやゲルマニウムを導入した材料が高い性能を示しました。この正極材料の酸素レドックス反応に関して、放射光を用いた分光分析と計算科学の双方から調べた結果、置換されたpブロック元素が酸素と共有結合し、酸素脱離抑制に寄与していることを見出し(図2)、これによってサイクル性が向上したと考えられます。正極の性能や元素の資源性を考慮すると、シリコンやリンの導入がレアメタルフリー正極材料の高性能化に有効であると考えられます。

今後への期待

 レアメタルフリーな高エネルギー正極材料の創出に向けて、今回開発した材料は、鉄を金属源に使用してレアメタルフリー化させること、鉄と酸素の二つのレドックス反応を利用し高容量化させること、そして不安定な酸素のレドックス反応に対しリンやシリコンなど比較的サプライチェーンリスクの低いpブロック元素を導入し安定化させることで、サイクル性向上を達成することができました。これにより、さらなる要素技術開発による長期サイクル化が期待できます。また、本技術はリチウム空気電池など他の次世代リチウムイオン電池開発技術にも展開可能であり、研究進展による低炭素化社会、地球温暖化対策への貢献が期待されます。

関連するプレスリリース

東北大学?名古屋工業大学共同プレスリリース「安価な鉄系正極材料の容量を2倍に リチウムイオン電池の低コスト化と高エネルギー密度化に期待」

発表日:2023117
URL:http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/01/press20230117-01-redox.html

謝辞

本研究は、JSPS科研費 若手研究(JP19K15668)、基盤研究(B)(JP20H02436)、JST ALCA-SPRING (JPMJAL1301)、「物質?デバイス領域共同研究拠点」のCOREラボ共同研究プログラムの支援を受けて行われました。

論文情報

論文名 Toward Cost-Effective High-Energy Lithium-Ion Battery Cathodes: Covalent Bond
Formation Empowers Solid-State Oxygen Redox in Antifluorite-Type Lithium-Rich Iron
Oxide(低コストかつ高エネルギーなリチウムイオン電池正極の開発:逆蛍石型鉄酸化物中
の共有結合形成による固体内酸素レドックスの促進)
著者名 小林弘明*、1、2、中村祐輝2、横山弓夏3、本間 格2、中山将伸3(1北海道大学大学院理学研究院、2東北大学多元物質科学研究所、3名古屋工業大学大学院工学研究科)*責任著者
雑誌名 ACS Materials Letters(アメリカ化学会の発行する材料科学の専門誌)
DOI 10.1021/acsmaterialslett.4c00268
公表日 2024年4月22日(月)(オンライン公開)

参考図

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1開発した材料の10サイクル充放電後の酸素レドックス反応の容量維持率。

 

press_nakyama_image2.png

2リンドープによる酸素脱離反応の抑制挙動の解明。(a)実験的に充電反応時の酸素発生量が減少することを確認した。(b)計算科学により酸素脱離反応がより起こりづらくなることを見出した。

用語解説

*1 メカニカルアロイング ... 粉末原料と硬質ボールとを機械的に衝突させ、その衝突エネルギーで合金や新材料を合成するプロセスのこと。

*2 準安定 ... 室温?大気中において、不安定な状態でありながらも、その状態を長時間維持することが可能な状態。

お問い合わせ先

研究に関すること

北海道大学大学院理学研究院 准教授 小林弘明(こばやしひろあき)
TEL 011-706-2706 
FAX 011-706-2702
メール h.kobayashi[at]sci.hokudai.ac.jp

東北大学多元物質科学研究所 教授 本間 格(ほんまいたる)
TEL 022-217-5815
メール itaru.homma.e8[at]tohoku.ac.jp

名古屋工業大学大学院工学研究科工学専攻(生命?応用化学領域)
教授 中山将伸(なかやままさのぶ)
TEL 052-735-5189
メール nakayama.masanobu[at]nitech.ac.jp

広報に関すること

北海道大学社会共創部広報課
TEL 011-706-2610 
FAX 011-706-2092 
メール jp-press[at]general.hokudai.ac.jp

東北大学多元物質科学研究所広報情報室
TEL 022-217-5198 
メール press.tagen[at]grp.tohoku.ac.jp

名古屋工業大学 企画広報課
TEL 052-735-5647
メール pr[at]adm.nitech.ac.jp

*[at]を@に置換してください。


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